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こんな症状に気をつけて~犬猫の多飲多尿~

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【執筆】
かどのペットクリニック 葛野 莉奈先生
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「こんな症状に気をつけて~犬猫の多飲多尿~」
 
前回項目ごとに気をつけてチェックしておくと安心なことをお話しさせていただきました。
毎日見ていくと、特に中高齢の子は、ごはんの量が変わらないのに太りやすくなったり、
寝ている時間が多くなったり、歩き方に違和感を感じたりすることもあるのではないでしょうか。
今回はその中でも特によくあるけれど見逃しがちな多飲多尿についてお話させていただこうと思います。
 
多飲多尿とは、飲水量が増え、その結果尿量も増えてしまう状態を示します。
前回もお話ししたとおり、個体差はありますが、犬であれば大体体重1キロあたり50から60ml、
猫であれば大体その半分くらいと言われています。
中にはウェットフードを食べている子もいると思います
その場合、ごはんの中に多く水を含んでいるので、
前述した平均的な量よりも少ないこともありますので、
少なかったから健康に問題がある!というわけではありません。
ご安心ください。
 
そして、尿量です。
尿量は飲水量によって量が決まります。
病的な場合、飲水量が増えるため尿量も増えたり、腎臓機能により、
体に水分をとどめておくことができず、尿量が増えることとなります。
またしっかりと濃い尿が出るかどうかということも大切です。
ただし、この濃さもお水をたくさん飲んだ後は薄くなったり、
お出かけなどでお水をあまり飲めていないときなどでは濃くなったりと変化があります。
ではどこを見て判断したらいいのでしょうか。
おすすめは一番濃い尿がでるはずである朝一番の尿です。
寝ている間に頻繁に排尿やお水を飲みに起きる子は少ないと思いますので、
しっかりと膀胱にたまり、かつあまり飲んだお水の量に左右されない尿と言えるでしょう。
そのため、検査の際には朝一番の尿を採って診させていただくことが多いのです。
濃さは「尿比重」という尿検査の項目で腎疾患の際の指標にもなります。
多尿というのは何mlくらいという目安よりも、
シーツやお散歩の際の出た量を目分量で見ていてどのくらいかというのを覚えておく程度で良いと思います。
たとえばシミの大きさが毎回どのくらいの大きさかというように目安にしてもいいかもしれませんね。
若い頃との比較が大切になるので、中高齢になってから気をつけるのではなく、
若い子たちも、その子の平均値を知るために、普段から気をつけられると良いですね。
 
では、多飲多尿の傾向が見られた場合、どんな疾患が考えられるのでしょうか。
考えられるのは、よくあるものとして
〇腎不全
〇クッシング症候群
の2つがまず挙げられます。
 
腎不全は腎臓と呼ばれる臓器の病気です。
腎臓は体内の毒素を尿として排出し、水分を調節しながら排泄する機能があります。
腎不全になると毒素が上手く排出できなくなり、体内の水分もどんどん排出してしまうようになります。
指標としては大量の薄い尿をするようになるので、尿検査や血液検査で判断することが多いです。
症状が悪化すると、毒素(血中尿素窒素)が上がることで、
だるさや気持ち悪さなどにより体調不良になってしまい、
水分の排出が多いことで脱水症状になってしまうことや、
腎臓は造血ホルモンを分泌するため、その機能が低下し、
貧血も併せて死にも繋がってしまう可能性があります。
定期的に検査をすることで、症状が出る前に発見することができると思います。
長生きをしてもらうために、定期的な検査ももちろんですが、
飲水量や排尿の状態をチェックすることで、早期発見・早期処置が可能だと言えるでしょう。
腎不全は特に高齢の猫ちゃんでよく見られる病気です。
わんちゃんや、高齢でない子たちもなる可能性はありますので、普段からのチェックは大切です。
また、腎不全と確定した後の治療は点滴やお薬の投与がメインとなります。
症状が悪化した場合、入院での管理が必要となる可能性がありますが、
全身状態などによっては往診での処置やお家でのケアも可能です。
病院が苦手な子も、まずは治療の際に相談してみていただけたらと思います。
 
そしてクッシング症候群です。
クッシング症候群とは副腎と呼ばれる腎臓の近くにある臓器が機能亢進してホルモンを分泌してしまう病気です。
そのホルモンの成分というのが、コルチゾールといってステロイドと同じ成分のため、
免疫機能の低下・脱毛・多飲多尿・筋力の低下・呼吸が荒くなるなどの異常を引き起こします。
機能が亢進してしまう原因として、副腎に指令が送られる脳下垂体という器官の異常の場合と、
副腎そのものの異常による場合があります。
これらの検査をして、機能亢進が見られた場合、治療へと移行する形をとることが多いでしょう。
治療は内科的な治療が一般的ですが、副腎の腫瘍化が原因であれば切除、
脳下垂体の腫瘍化が原因であれば放射線治療を行う場合もあります。
この疾患そのもので、命の危険にも繋がる大きな症状があるわけではありませんが、
この疾患により感染しやすくなったり、とくに皮膚疾患などは併発することで治療の効果がなかなか出なくなったりする可能性があります。
クッシング症候群の症状が出ていて、何か疾患を併発していたり、
体力等も低下しているようであれば治療をおすすめするケースが多いです。
クッシング症候群は中高齢のワンちゃんに多いですが、
その他の場合でも可能性が全くないわけではありませんので、
気になる場合はおっしゃって頂いた方が良いと思います。
 
これらの病気は、普段から気をつけていることで、初期に発見し、早期の処置をすることが可能です。
症状を悪化させて命の危険につなげてしまわぬよう、
そして少しでも負担を軽減して違和感を感じさせないであげられるようにしてあげられたら理想的ですよね。
疑わしい症状があった場合、どちらの病気も検査が必要ですが、
受診が難しい場合も往診やオンライン相談で次のステップへの検査や治療への方向性が立てられるかもしれません。
まずはご相談をしてみて頂けると良いと思います。

 

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